ゴルフで左膝・右膝が痛い ─ 膝は加害者ではなく被害者。左右で痛む理由が違う本当の仕組み

ラウンドの後半になると、左膝の内側がズキッとする。

練習場で球数を打った翌日、右膝の前が重だるい。

病院で撮ってもらっても「軟骨が少し」「年齢的なもの」。膝のストレッチとサポーターを渡されて、それで終わり。

先にお伝えします。膝は加害者ではなく、被害者です。 痛む場所と、壊している場所は違います。

30秒で結論

  • ゴルフの膝の痛みは、膝そのものが壊れて起きているのではありません。膝は曲げ伸ばしのための関節で、ねじれる仕組みをほとんど持っていません。それなのに、上(股関節)と下(足首)が仕事をしないぶんのねじれを、まるごと引き受けています。
  • 左膝と右膝では、痛む理由がまったく違います。 左膝(フォロー側)は、体が回っていくのに左足の裏が地面に張りついたまま起こるねじれ。右膝(バックスイング側)は、右に乗るときに股関節が内へねじれてくれないために起こるねじれです。
  • 同じ左膝でも、内側が痛む人は「膝が内へ倒れる」タイプ外側が痛む人は「膝を伸ばしきって突っ張る」タイプで、火元が別物です。同じ対処をしても片方にしか効きません。
  • 共通の火元は3つ。足首の背屈(すねが前へ倒れる動き)の制限股関節の回旋の制限足のアーチの潰れ。ここが動かない量だけ、膝がねじられます。
  • 「右膝の角度をキープ」「ベタ足で我慢」という指導が、痛みを作っていることがあります。 下を固定したまま上が回れば、差分の落ち先は膝しかありません。
  • 膝が急に腫れて熱を持つ、引っかかって伸びない(ロッキング)、膝が抜ける、体重をかけられない——このどれかがあるなら、まず整形外科へ。ここは診断の領域です。

この記事が答える質問

  • ゴルフで左膝が痛いのはなぜか?
  • ゴルフで右膝が痛いのはなぜか? 左膝とは原因が違うのか?
  • 膝の内側が痛む人と、外側が痛む人は何が違うのか?
  • ラウンドの後半や翌日に痛くなるのはなぜか?
  • 「膝を固定しろ」「ベタ足で」という指導は、膝にとって正しいのか?
  • 膝を触らずに、自分の原因を見分ける方法はあるか?
  • 家で何をすれば、膝にかかるねじれを減らせるのか?
  • どの状態なら整形外科へ行くべきか?

はじめに ─ 「膝を痛めるようなスイングはしていないつもりなのに」

膝が痛くなったゴルファーの多くは、まず自分のスイングを疑います。無理な回し方をしたんじゃないか、力みすぎたんじゃないか、と。

そして、レッスンで「膝を動かさないように」と言われ、サポーターを巻き、膝周りのストレッチを増やします。

しばらくは楽になります。けれど、また同じところが痛みます。

理由はひとつです。痛んでいる場所に対処しているからです。 膝は、他の場所ができなかった仕事を肩代わりして壊れています。肩代わりの量を減らさない限り、膝の側で何をしても、また同じところに戻ってきます。

これは「膝を診なくていい」という話ではありません。膝を診るには、膝の上と下を診るしかない、という話です。

第1章【正体】膝は加害者ではなく被害者。痛む場所と、壊している場所は違う

膝は、ねじれるようにできていない関節です

人の下半身の関節を、上から順に見てみます。

  • 股関節(脚の付け根)── 前後・左右・回旋の3方向すべてに動く、球状の関節です。回旋がいちばん得意な関節のひとつです。
  • 膝関節 ── 基本は曲げ伸ばしだけの、蝶番のような関節です。
  • 足首から下(足関節と、そのすぐ下にある距骨下関節) ── 上下・内外に傾き、ねじれを逃がす役割を持っています。

つまり、ねじれを扱えるのは上と下だけで、真ん中の膝はねじれを扱えません。

さらに厄介なことに、膝には終末回旋(スクリューホーム機構)という仕組みがあります。膝を伸ばしきる最後に、すねの骨がわずかに外へ回ってロックがかかる、というものです。裏を返すと、伸びきった膝には、ねじれの遊びがほとんど残っていません

そしてインパクトは、左膝がまさに伸びていく局面です。伸びながら、ねじられる。 膝にとって、いちばん逃げ場のない組み合わせがここで起きています。

左右の膝は、そもそも受けている負荷が違います

ゴルフスイング中の膝にかかる力を3次元で計測した研究があります。そこでは、前の膝(リード側)と後ろの膝(トレイル側)とで、ピーク時の力とモーメントが有意に異なっていたと報告されています。さらに、技術レベルと相関していたのは前の膝の屈曲方向と内旋方向のモーメントだけでした(Gatt 1998, Am J Sports Med)。

左右で、かかる力の中身が違う。だから左右で痛み方も違うし、やるべきことも違います。 ここを分けずに「ゴルフの膝痛」とひとくくりにするから、対処が空振りするのです。

「画像に写った変化」と「今の痛み」は同じものではありません

「半月板がすり減っている」と言われた方も多いと思います。

ただ、MRIで半月板の異常が見つかった人のうち、6割以上は直近1か月に膝の痛みがなかったという報告があります(Englund 2008, N Engl J Med)。画像の変化は、痛みのない人にもごくありふれています。

これは「半月板の所見を無視していい」という意味ではありません。画像に写った変化が、今日あなたの膝が痛む理由とは限らない、ということです。だからこそ、「なぜこの膝にねじれが集まるのか」を診る価値があります。

常識の否定 ─ 「膝を固定しろ」が痛みを作っていることがあります

ゴルフでよく言われる指導があります。

  • 「右膝の角度をキープしなさい」
  • 「左膝を伸ばすな」
  • 「ベタ足で我慢して振り抜きなさい」

言いたいことは分かります。上手い人の右膝は、たしかに角度が保たれています。プロの左足も、簡単には浮きません。

ただし、それは結果として起きている形であって、命令して作る形ではありません。

プロの右膝の角度が保たれているのは、右股関節が内へねじれて骨盤が回ってくれているからです。股関節が回旋を引き受けているから、膝は動かなくて済んでいる。順番はこちらです。

ところが、股関節が回らない人が同じ形を作ろうとするとどうなるか。上半身は回ります。下は固定されています。回旋の差分は、どこかに落ちなければなりません。落ち先は膝しか残っていません。

「膝を動かすな」と言われて素直に固定した人ほど、膝の中でねじれています。真面目な人ほど痛くなる、というのはこういう構造です。

正しい形は、条件が揃ったときに勝手に起こります。 意識で押さえ込んで作った形は、必ずどこかに代償を出します。これが当院の基本的な考え方です。

第2章【機序】左膝と右膝は、痛む理由がまったく違います

ここからが本題です。右打ちを前提に書きます(左打ちの方は左右を入れ替えてお読みください)。

左膝(フォロー側)── 体は回るのに、足の裏が動かない

切り返しからインパクト、フォローにかけて、骨盤と胴体は目標方向へ回っていきます。このとき左足は地面に着いたままです。

つまり、上から回旋が降りてくるのに、いちばん下は床に固定されている。この状態です。

本来、この回旋は3か所で分担されます。

  1. 左股関節が、外へねじれながら伸びる(骨盤が太ももの骨の上を回っていく)
  2. かかとの上の関節(距骨下関節)が、わずかに傾いてねじれを受ける
  3. 左のつま先が、ほんの少し外を向いて逃げる

この3つのどれも使えなかったとき、残った差は膝関節の中に落ちます。太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)が、互いに逆方向へねじれる。膝はねじれの関節ではありません。 ここで組織が悲鳴を上げます。

左膝の「内側」が痛む人 ── 膝が内へ倒れているタイプ

体重を受けた瞬間に、膝が内側へ落ち込みます(膝が内に入る、専門的には膝の外反)。

起きていること:

  • お尻の横(中殿筋)と後ろ(大殿筋)が、体重を受けながら股関節を外へ回す仕事をしていない。支えが抜けた分、膝が内へ倒れます。
  • 足のアーチが潰れている(過回内)。土台が内へ倒れるので、すねの骨も一緒に内へねじれます。

負担が集中する場所:

  • 内側半月板 ── 内側の靱帯と関節包にくっついていて、動いて逃げることができません。だから内側から壊れます。
  • 内側側副靱帯(膝の内側を縦に走る靱帯)
  • 鵞足(がそく。3本の筋肉がすねの内側に集まって付く場所)

こういう実感で現れます:

  • フォローで踏ん張った瞬間、膝の内側がズキッとする
  • 階段を下りるときも内側が痛む
  • ラウンド後半になるほど強くなる

左膝の「外側」が痛む人 ── 膝を伸ばしきって突っ張るタイプ

こちらは逆で、膝が内へ落ちるのではなく、伸ばしきってロックし、突っ張って受け止めている状態です。

起きていること:

  • 足首の背屈(すねが前へ倒れる動き)が出ない。膝を曲げたまま体重を受けられないので、伸ばして固めるしかありません。
  • 左股関節が、外へねじれながら伸びてくれない。骨盤が回る受け皿がないので、左足の外側へ体重を逃がして体を回そうとします。

負担が集中する場所:

  • 腸脛靭帯(骨盤の外側から膝の外側へ走る太い帯)と、太ももの骨の外側の出っ張りとのこすれ
  • 外側の関節面(伸びきった膝で外側から圧縮される)
  • 膝の後ろ外側の詰まり

こういう実感で現れます:

  • フィニッシュで左膝が伸びきる、あるいは反り返る感じがある
  • 膝の外側が張る、動き出しにズキッとする
  • 歩く距離が長かったラウンドの翌日に、外側が痛い

内側と外側で、やることは真逆になります。 内側の人は膝が内へ落ちない支えを作る。外側の人は膝を伸ばしきらずに済む足首と股関節を作る。ここを分けないまま同じストレッチをしても、片方にしか当たりません。

右膝(バックスイング側)── 右に乗るときに、股関節がねじれてくれない

バックスイングで右へ体重が乗るとき、骨盤は右へ回ります。右足は地面に着いたままです。

ここで必要なのは、右股関節が内へねじれる(内旋)ことです。骨盤が右の太ももの骨の上を回っていく動きだと思ってください。

この内旋が出ない方は非常に多くいます。座っている時間が長い方、股関節の前側が硬い方に多く見られます。

内旋が出ないと骨盤が回れません。すると体は、足りない動きを別の場所で作ろうとします。その代表が右膝を前へ出して、内へ入れるという動きです。

なお、「右膝が前に出る」という現象そのものの仕組みと、「右膝を出すな」という指導がなぜ逆効果になるのかは、別記事で詳しく扱っています(→「右膝を出すな」は逆効果。太もも裏のブレーキを直せばスイングは変わる)。ここでは痛みの側だけを見ていきます。

右膝は、曲がったまま体重を受けながら、ねじられます。この組み合わせで負担が集中するのは次の2か所です。

  • 膝の内側(内側半月板・内側側副靱帯)── すねの骨が内へねじれ、膝が内へ入る力を受け続けます。右足の親指の付け根で踏ん張り続ける方は、足のアーチも潰れるので、この力がさらに強くなります。
  • お皿の周り(膝蓋大腿関節)── 膝が曲がったまま前へ出て、もも前(大腿四頭筋)だけで体重を支えることになります。お皿が太ももの骨に押しつけられます。

こういう実感で現れます:

  • トップで右膝の内側が詰まる、張る
  • 右膝の前がだるい、重い。練習で球数を打った翌日に強い
  • 切り返しで右膝がグッと内に入る感じがある

ラウンドの後半や翌日に痛むのは、なぜか

「1球目から痛いわけではない。後半になると痛む」——非常に多いご相談です。

これは膝が急に弱くなったのではありません。股関節と足首の仕事量が、疲労で落ちてくるからです。

前半は、股関節が回旋を引き受け、足首がねじれを逃がしてくれています。ホールが進み、お尻や足首まわりの筋が疲れてくると、その分担が崩れます。分担が崩れた分は、そのまま膝に回ります。

つまり、後半に痛むということは、前半から膝が肩代わりし始めていたということです。痛みは最後に出てくる結果であって、始まりではありません。

共通の火元は、この3つです

左右どちらの膝でも、たどっていくと同じ場所に行き着きます。

① 足首の背屈が出ない(しゃがめない)

すねが前へ倒れる動きを背屈と言います。ここが硬いと、体重を受けるときに膝を前へ送れません。

これは実験でも確認されています。足首の背屈を人工的に制限してスクワットをさせると、膝が内へ入る動き(膝外反・膝の内側変位)が増え、もも前の筋活動が落ちて、ふくらはぎの筋活動が上がったと報告されています(Macrum 2012, J Sport Rehabil)。

足首を止めると、膝が内へ落ちる。実験室で再現できるほど、まっすぐな因果です。

そしてもうひとつ。地面反力は、踏もうと思って生むものではありません。 足が地面を正しく捉えたときに、アキレス腱の反射として返ってくるものです。足首が硬いと、この受け取りが成立しません。返ってこない分を、膝で突っ張って支えることになります。

② 股関節の回旋が出ない

右股関節の内旋(バックスイング側)と、左股関節の外旋(フォロー側)。この2つが、スイング中の回旋の受け皿です。

ここが出ない量だけ、膝がねじれを引き受けます。差し引きの計算です。気合いでも意識でも変わりません。関節が動く角度を持っていない動きは、何回言われても出てきません。

なお、股関節まわりの筋肉はスイング中に高い活動を示すことが、筋電図の研究で報告されています(Bechler 1995, Clin J Sport Med)。本来、ここが主役の関節なのです。

③ 足のアーチが潰れている

足の内側のアーチが落ちると、かかとの骨が内へ倒れ、それに引っ張られてすねの骨も内へねじれます。膝から下が勝手に内旋している状態です。

上から降りてくる回旋と、下から上がってくる内旋。膝はその真ん中で挟まれます。

ちなみに、体幹の支え(腹圧)が抜けている方も同じ結果になります。上半身を支えられないと、下半身だけで回旋を作ろうとするからです(→コリン・モリカワも実践する腹圧アドレス)。

第3章【判別】自分がどれに当てはまるか

膝は触りません。火元は膝ではないので、膝を調べても答えは出ないからです。 その場でできる3つを挙げます。

チェック① しゃがみ込み(足首の背屈)

足を腰幅に開き、つま先はまっすぐ前へ。かかとを床から離さずに、できるところまでしゃがみます。

  • かかとが浮く
  • 後ろに倒れそうになる
  • しゃがむ途中で膝が内へ寄っていく

このどれかがあれば、足首の背屈が足りていません。

左右差は、片脚ずつで見ます。足を前後に開き、後ろ足はそのままで前脚の膝だけを前へ送ります。かかとが浮く側が、制限のある側です。

通過ライン: かかとが床についたまま、太ももが床と平行より下まで落ちる。

チェック② 片脚立ち(30秒・左右)

鏡の正面で片脚立ちになり、30秒。ふらつきの有無ではなく、形の崩れ方を見てください。

  • 支えている側と反対に、骨盤がストンと落ちる
  • 膝が内側へ入っていく
  • 足の指が床を強く握りしめる

これが出る側は、お尻の横(中殿筋)と股関節の外旋の支えが働いていません。その側の膝は、内側に痛みが出やすい状態です。

チェック③ 股関節の回旋(座って左右差を見る)

椅子に浅く腰かけ、膝を90度に曲げます。

  • 内旋: 片脚のかかとを床につけたまま、足先だけを体の外側へ倒します
  • 外旋: 同じように、足先を体の内側へ寄せます

左右を比べてください。倒れる角度に明らかな差があるかどうかが見どころです。

読み取り表

引っかかったチェック 出やすい痛み
しゃがみ込みでのかかとが浮く 左膝の外側。伸ばしきって受けるタイプ
片脚立ちでの膝が内へ入る/骨盤が落ちる 左膝の内側。膝が内へ倒れるタイプ
股関節の内旋が出ない 右膝の内側、お皿まわり
股関節の外旋が出ない 左膝の外側、後ろ外側の詰まり
立ったときに足の内側アーチが潰れている 左右どちらも内側が痛みやすい

3つとも引っかかる方も珍しくありません。その場合は、足首から順に手をつけてください。土台が動かないまま上だけ変えても、また戻ります。

第4章【手順】膝を触らずに、膝のねじれを減らす3つのドリル

道具は身近なもので足ります。第3章の3つのチェックに、そのまま対応しています。

ドリル① ペットボトルを持ってしゃがむ(足首の背屈を出す)

やり方

水を入れた2Lのペットボトルを、両手で胸の前に持ちます。足は腰幅、つま先はまっすぐ前。かかとを床から離さずに、ペットボトルを軽く前へ出すようにして、5秒かけてゆっくりしゃがみます。いちばん下で3呼吸。5秒かけて立ちます。これを5回。

重りを体の前に持つと後ろに倒れずに済むので、足首が本来の角度まで曲がれるようになります。

何が起きたら成功か

  • 底の位置で、かかと全体に体重が残っている
  • すねが前へ倒れ、膝がつま先と同じ方向へ出ている
  • 張りを感じるのは、もも前ではなくお尻と、ふくらはぎの奥

失敗しているサイン

かかとが浮く/膝が内へ寄る/もも前だけが焼ける。この場合は深さを浅くして、かかとがついたままの範囲でだけ動かしてください。可動域は、無理に押し込んでも増えません。

ドリル② 100均ボールを膝で挟んで、片脚に乗る(膝を内へ落とさない)

やり方

100円ショップの空気ボール(直径15〜20cmほど)を両膝の間に挟み、軽く潰したまま立ちます。潰す力を保ったまま、体重の7割を片脚へ移して10秒。左右3セットずつ。

内ももの筋肉(内転筋)が働くと、太ももの骨が股関節の受け皿にしっかり収まります。この収まりが、膝が内へ倒れるのを止める支えになります。

何が起きたら成功か

  • 内ももの付け根(脚の付け根の内側)に張りが出る
  • 体重を移しても、膝のお皿の向きが変わらない
  • 足裏は、親指の付け根・小指の付け根・かかとの3点に均等に乗っている

失敗しているサイン

ボールが落ちる/膝が内へ入る/足の指で床を握りしめる。指で握りしめるのは、足のアーチが支えを失って必死になっている合図です。

ドリル③ クラブを担いで、軸脚の上で骨盤だけを回す(股関節の回旋)

やり方

クラブ1本を肩の後ろに担ぎます。足は腰幅、膝を軽く曲げます。上半身は正面を向いたまま、骨盤だけを右へ、左へ、ゆっくり回します。10往復。

慣れてきたら、体重の7割を片脚に乗せて同じことをします。右へ回すときは右股関節が内へ、左へ回すときは左股関節が外へねじれます。膝ではなく股関節で回す練習です。

何が起きたら成功か

  • 膝のお皿の向きが変わらないまま、ベルトのラインだけが回る
  • 回した側のお尻の奥(表面ではなく深いところ)に張りを感じる
  • かかとが床から浮かない

失敗しているサイン

膝が一緒に内や外を向く/かかとが浮く/腰や背中でねじっている感じがする。膝が一緒に回っているなら、それがコースで膝を壊している動きそのものです。

順番と回数

足首(①)→ 支え(②)→ 回旋(③) の順で行ってください。土台から上へ、が原則です。

3つ合わせて10分ほど。毎日でも、ラウンド前の準備としてでも構いません。特にラウンド当日の朝に①と③を入れておくと、後半で膝に回ってくる仕事量が変わります。

第5章【注意】やってはいけないことと、医療機関へ行くべきサイン

膝の痛みを長引かせる5つのこと

1. 痛む膝そのものを、伸ばし込む・強く揉む

膝は肩代わりをして張っています。緩めても、翌ラウンドでまた同じ量を肩代わりします。緩めること自体は悪くありませんが、それだけでは終わりません。

2. サポーターで固めて、同じスイングで打ち続ける

移動時や仕事中の一時的な支えとしては役に立ちます。ただし、固めた分のねじれは股関節と足首へ回ります。そこが動かないままなら、行き先を変えただけです。

3. もも前(大腿四頭筋)の筋トレだけを増やす

「膝の周りを鍛えて守る」という発想ですが、もも前を強くするとお皿が太ももの骨に押しつけられる力も強くなります。膝が内へ落ちる原因は股関節の支えなので、そちらは変わりません。

4. 「ベタ足」を意識して、左足を床に貼りつけたまま振り抜く練習を重ねる

上が回るのに下が動かない、という状況を意図的に作ることになります。第1章で書いた通り、差分の落ち先は膝しかありません。

5. 痛みを我慢して、痛む側をかばって打つ

かばった分は、反対の膝・股関節・腰へ移ります。痛みの場所が移動しただけで、体全体では悪くなっています。

この状態なら、まず整形外科へ

以下は、こちらの領域ではありません。診断は医療機関の役割です。

  • 急に腫れて、触ると熱を持っている
  • 膝が引っかかって伸びない・曲がらない(ロッキング)、または膝が抜ける・崩れる感じがある ── 半月板や靱帯の損傷を疑う所見です
  • 体重をかけられない、立てない
  • 発熱を伴う、赤みが強い
  • ひねった直後に音がして、その日のうちに腫れてきた

これらは、画像と診察で確かめるべきものです。遠慮なく整形外科へ行ってください。

そのうえで——「画像では異常なし」「年齢的なものですね」と言われた膝。ここが、機能の視点で診る価値がいちばん高い領域です。骨や軟骨に説明がつかないのなら、説明は動きの側にあります。

なぜ、当院(メディカルゴルフ)なのか

当院は、打つ前に、診ます。

「スイング人間ドック」と呼んでいます。動画によるフォーム分析と、体の機能評価を組み合わせた医療級のスイングスキャンです。

なぜ打つ前に診るのか。飛ばない・曲がる・痛いは、すべて代償運動だからです。 どこかができない仕事を、別のどこかが肩代わりしている。その肩代わりの地図を先に持たないまま打ち方を変えても、代償の置き場所が移るだけです。

膝の痛みは、その典型です。膝そのものは正直に壊れているだけで、指示を出しているのは別の場所です。

担当するのは、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の国家資格3種を持つ臨床家です。 臨床は20年になります。PRI・DNS・機能的動作分析にもとづき、痛みの改善とパフォーマンスを同じ枠組みで扱います。

実際に見る順番は、この4つです。

  1. 関節が動くか(足関節の背屈、股関節の内旋・外旋、胸椎の回旋)
  2. 支えられるか(腹圧、片脚での支持、足部のアーチ)
  3. 順番通りに働くか(地面から順に力が伝わるか。どこで途切れているか)
  4. それがあなたのスイングのどこに出ているか(動画との突き合わせ)

そのうえで、動かない場所を戻し、使えるようにし、スイングに書き換えます。この工程を当院ではR3(リセット・リロード・リライト)と呼んでいます。

順番が肝心です。硬いまま鍛えれば、代償運動ごと強くなります。緩めただけで動作に戻さなければ、体は元のやり方を選び直します。

そして、膝の痛みが引いた方は、たいてい同時に飛距離も戻ります。 膝でねじれを受け止めていた人が、股関節で回れるようになるからです。痛みを消すことと、球を飛ばすことは、別の作業ではありません。

よくある質問(FAQ)

ゴルフで左膝が痛いのは、なぜですか?

切り返しからインパクトで体が左へ回っていくのに、左足の裏が地面に張りついたままだからです。 上から降りてくる回旋を、左股関節と足首が受けきれないと、差分が膝関節の中でのねじれになります。膝は曲げ伸ばしのための関節で、ねじれを扱えません。左股関節の外旋と、足首の背屈から見ていきます。

左膝と右膝で、痛む理由は違うのですか?

まったく違います。 左膝は「体が回っていくのに足が動けない」ことで起こるねじれ、右膝は「右に乗るときに股関節が内へねじれてくれない」ことで起こるねじれです。局面も、足りていない動きも別です。スイング中の左右の膝にかかる力は、計測研究でも有意に異なることが示されています(Gatt 1998)。同じ対処をしても、片方にしか当たりません。

膝の内側が痛むのと、外側が痛むのは何が違いますか?

内側は「膝が内へ倒れている」、外側は「膝を伸ばしきって突っ張っている」で、火元が逆です。 内側の方はお尻の横の支えと足のアーチ、外側の方は足首の背屈と股関節の外旋から手をつけます。第3章のチェックで、どちらかは判別できます。

MRIで半月板損傷と言われました。手術しかないのでしょうか?

まず、画像の所見と今の痛みが同じものとは限りません。 半月板の異常が見つかった人の6割以上は直近1か月に痛みがなかった、という報告があります(Englund 2008)。また、変性による半月板断裂に対する関節鏡手術と、見せかけの手術(皮膚を切っただけ)を比較した試験では、結果に差が出ませんでした(Sihvonen 2013)。手術の適応判断は主治医の領域です。そのうえで、ロッキングや膝崩れがない状態なら、なぜねじれが集まるのかを変える余地があります。

サポーターは使っていいですか?

移動時や仕事中の支えとしては使ってください。 ただし、装着したまま同じスイングで打ち続けると、固めた分のねじれが股関節や足首、反対脚へ回ります。サポーターは時間を稼ぐ道具であって、原因を動かす道具ではありません。稼いだ時間で、股関節と足首を変えてください。

ラウンドは休んだほうがいいですか?

腫れ・熱感・ロッキング・膝崩れがあるなら休んで、整形外科へ。 それらがないなら、ラウンドそのものを止める必要はありません。ただし前半から膝が肩代わりを始めているので、当日の朝に足首の背屈と股関節の回旋を入れておくことをおすすめします。後半に回ってくる仕事量が変わります。

もも前の筋トレをすれば、膝を守れますか?

もも前だけを強くすると、お皿が押しつけられる力も一緒に強くなります。 膝を守っているのは、実際にはお尻の横と後ろ(股関節を外へ回す力)と、足首・足部です。鍛える場所を変えてください。順番としては、動く範囲を先に取り戻してから支える力をつけます。硬いまま鍛えると、代償運動ごと固まります。

「ベタ足のほうが飛ぶ」と聞きました。膝には悪いのでしょうか?

上手い人の足が動いていないように見えるのは、股関節が回旋を引き受けているからです。 足を貼りつけること自体が飛距離を生んでいるわけではありません。股関節が回らない人が足だけ固定すると、ねじれの落ち先が膝しか残らず、飛距離も出ません。飛距離は連動性の総合力です。順番を逆にしないでください。

どのくらいで変わりますか?

足首や股関節の可動域が主な原因であれば、初回で動きの変化を体感される方が多くいます。 その場でしゃがめるようになる、片脚立ちで膝が内へ落ちなくなる、というところまでは初回で確認できます。スイングの中で定着させるところまでは、状態に応じて設計します。初回の評価のあとに、見通しをお伝えします。


おわりに

膝が痛いと、人はまず膝を責めます。使いすぎた、年をとった、無理な振り方をした、と。

けれど膝は、指示を出す側ではありません。上と下ができなかった仕事を引き受けて、静かに壊れているだけです。

膝は曲げ伸ばしのための関節です。ねじれる仕組みを持っていません。それなのに、股関節が回らず、足首が硬く、アーチが潰れていれば、ねじれは全部そこに落ちます。落ちれば壊れます。当たり前のことが起きているだけです。

痛む場所と、壊している場所は違います。

だから、膝を触らずに膝を治す、という道があります。しゃがめるようにする。片脚で支えられるようにする。股関節で回れるようにする。それだけで、膝に届くねじれの量が変わります。

痛みは我慢するものでも、年齢のせいにして終わらせるものでもありません。理由がある以上、変えられる場所があります。

ご相談ください

東大阪Mitz BestPerformance(メディカルゴルフラボ)

  • 所在地:大阪府東大阪市長堂1-2-20 陣内ビル2F(近鉄布施駅すぐ)
  • 電話:06-7161-4593
  • 対応:スイングの機能評価、膝・腰・股関節の痛み、椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症、イップス
  • 来院エリア:東大阪・大阪市内のほか、奈良・堺・神戸など府外からも来院されています

初回は「スイング人間ドック」からお受けします。あなたの膝が、どこの仕事を肩代わりしているのかを、その場で目で見て確認していただけます。

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著者について

鈴木密正(すずき みつまさ)

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師(国家資格3種)。臨床20年。PRI・DNS・機能的動作分析にもとづき、痛みの改善とパフォーマンスを同じ枠組みで扱う。東大阪Mitz BestPerformance 代表。

参考文献

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※当院は診断を行いません。上記の受診サインに当てはまる場合、および器質的疾患が疑われる場合は、医療機関の受診を優先してください。

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