ゴルフの腰痛が接骨院で治らないのはなぜ?国家資格者が「診ている場面の違い」を解説

ゴルフの腰痛が接骨院で治らないのはなぜ?国家資格者が「診ている場面の違い」を解説

接骨院で電気をあてた。整形外科で湿布と痛み止めをもらった。マッサージで念入りに揉んでもらった。その場は確かに軽くなるのに、次のラウンドでまた同じ場所が痛む——。先に結論をお伝えします。効かなかったのは、施術者の腕の問題ではありません。診ている「場面」が違うだけです。鍼灸・あん摩マッサージ指圧・柔道整復の国家資格者が、その構造を解説します。

30秒で結論

  • 効かなかった理由は、施術の質ではなく「診ている場面」の違いです。 接骨院・整形外科・マッサージが向き合うのは、基本的にベッドの上で静止した体。ゴルフの腰痛は、その静止時にはほとんど姿を現しません。
  • ゴルフの腰痛が生まれているのは、クラブを振り下ろす一瞬、全身を強くねじって戻している動作の途中です。プロのスイングでは腰椎に体重の約8倍(約7,584N)の圧縮力がかかると報告されています(Lindsay & Vandervoort 2014, PMC4335481)。この負荷は、寝て触られている間には再現できません。
  • 電気・湿布・揉みほぐしは、炎症と筋緊張を下げる=マイナスをゼロに戻す役割です。とても有効ですが、痛みを生んでいる動作パターンそのものは変わりません。だから、また振れば戻ります。
  • 本当に必要なのは、動きの中で「どの関節が仕事をサボり、どこが肩代わりしているか」を見つけることです。ゴルフの腰痛では、股関節と胸椎(背骨の胸の部分)がサボり、腰椎が肩代わりしている形が典型です。
  • 窓口にはそれぞれ守備範囲があります。整形外科=画像で危険を除外/接骨院・整体=急性期の炎症と緊張を下げる/マッサージ=一時的な緩和/メディカルゴルフ=動作評価から動きの再学習まで。順番を守れば迷いません。
  • 筆者自身が柔道整復師(接骨院の国家資格)です。これは接骨院を否定する話ではなく、役割が違うという整理です。

この記事が答える質問

  • なぜ接骨院や整形外科に通っても、ゴルフの腰痛はぶり返すのか?
  • 「レントゲンは異常なし」と言われたのに、なぜ痛いのか?
  • 電気・湿布・マッサージは意味がないのか?
  • ゴルフの腰痛は、結局どこが火元なのか?
  • 接骨院・整形外科・マッサージ・メディカルゴルフの守備範囲はどう違うのか?
  • 結局、どういう順番で通えばいいのか?

効かなかったのは腕の問題ではなく、診ている場面が違うだけです

はじめに、通われた院の名誉のために書いておきます。あなたが受けた施術は、おそらく間違っていません。

問題は技術ではなく、設定された「場面」です。腰痛を診る時、ほとんどの施術はベッドの上に横になった状態から始まります。

ところが、あなたの腰が痛くなる瞬間は、ベッドの上ではありません。立って、地面を踏んで、上半身と下半身を逆方向にねじって、それを一気に戻している最中です。

痛みが生まれている場面と、それを探しにいく場面がずれている。だから何度通っても、答えの出ない場所を探し続けることになります。

接骨院も整形外科もマッサージも、診ているのは「ベッドの上で静止した体」です

整形外科のレントゲンやMRIは、止まった構造を写します。骨折、椎間板の変形、すべり症といった「形の異常」を見つけるには最強の道具です。

しかし、動いている最中に何が起きているかは写りません。画像は静止画であって、動画ではないからです。

接骨院での触診も同じ構図です。うつ伏せで腰に触れれば、硬くなっている筋肉や押して痛む場所は分かります。

けれども「その筋肉がなぜ硬くならざるを得なかったのか」は、立って動いてもらわないと出てきません

マッサージも同様で、緩めているのは今そこにある緊張です。緊張を生んだ動きは、ベッドの上には持ち込めません。

だから「レントゲンは異常なし」「特に問題ないですね」と言われるのは、むしろ自然なことです。静止時に異常が出ないタイプの腰痛だから、静止して探しても見つからないのです。

この「異常なしと言われた後」の道筋については、ゴルフの腰痛は何科?でも整理しています。

電気も湿布も揉みほぐしも、マイナスをゼロに戻す仕事です

ここは誤解されやすいので、はっきり書きます。電気・湿布・揉みほぐしは有効です。無駄ではありません。

これらが担っているのは、炎症を鎮め、過剰な筋緊張を落とすという仕事です。痛みで眠れない、張りが強くて動けない——そういうマイナスの状態をゼロまで戻してくれます。

痛めた直後の急性期に、この処置ができる場所があることには大きな価値があります。私自身、接骨院でこの役割を担う国家資格者です。

問題は、ゼロに戻った後に何をするかです。

痛みが引いた体で、あなたはまた同じスイングをします。同じ場所がサボり、同じ場所が肩代わりする。動作パターンは、施術では書き換わらないからです。

つまり、電気も湿布も揉みほぐしも、火事を消す消火活動です。素晴らしい仕事ですが、火元の配線が直っていなければ、また燃えます

「揉んだその日は楽なのに、3日後には戻っている」——この体感は、あなたの気のせいではありません。構造上、そうなるようにできているだけです。

ゴルフの腰痛の火元は、股関節と胸椎がサボり、腰椎が肩代わりしていることです

では、その火元はどこか。ゴルフの腰痛で圧倒的に多いのが、股関節と胸椎(背骨の胸の部分)のサボりです。

スイングは、体を大きくねじって、逆方向に一気に戻す動作です。本来この「ねじり」は、よく回るように作られた股関節と胸椎が引き受けます。

ところが、この2つが硬くて回らないとどうなるか。構造上ほとんどねじれないようにできている腰椎(腰の骨)が、その分を肩代わりします。

これが代償運動です。本来の担当がサボると、別の場所が代わりに無理をする。ゴルフの腰痛は、ほぼこの形で起きています。

腰は加害者ではなく、被害者です。だから腰だけを揉んでも、追いかけっこが終わりません。

この関係は、研究の側からも裏づけがあります。股関節の回旋と腰椎の回旋には強い相関(r=0.81)が報告されています(Mun F, et al. 2015, PMC4430877)。

つまり、股関節の動きと腰の動きは、切り離して考えられないということです。

腰だけを診ても答えが出ないのは、体の作りからして当然なのです。

そして、そこにかかる負荷は小さくありません。プロのスイングでは腰椎に体重の約8倍・約7,584Nの圧縮力がかかるとされています(Lindsay & Vandervoort 2014, PMC4335481)。

サボった分を肩代わりしながら、この圧縮力を毎回受け止める。腰が音を上げるのは、根性の問題ではありません。

スイング中の体幹の動きと腰への負担の関係は、その後の研究でも継続して検討されています(Edwards N, et al. 2020, PMC9219256)。

ゴルファーの運動器の不調が珍しいものではないことも、複数の調査で示されています(Williamson E, et al. 2024)。

代償運動そのものについては、痛みは全身でつながっている(代償運動ハブ)で全体像を解説しています。

「どの関節がサボっているか」は、動いてもらわないと分かりません

火元が動作の中にあるなら、探し方も動作の中でなければ噛み合いません。

当院で最初に行うのは、施術ではなく評価です。立ってもらい、しゃがんでもらい、ねじってもらい、実際にクラブを振ってもらいます。

見ているのは、痛い場所ではありません。痛い場所に仕事を押しつけている、サボっている場所です。

たとえば、右股関節が内側に入らない。すると切り返しで骨盤が流れ、腰椎が過剰にねじれる。この時、揉むべきは腰ではなく、動かない股関節と、働いていないお尻の横の筋肉(中殿筋)です。

たとえば、肋骨まわりが固まって胸椎が回らない。すると肩を回そうとした分が全部、腰に落ちてきます。

「腰が痛い」という同じ訴えでも、サボっている関節が違えば、やるべきことは正反対になります。だから評価が先なのです。

ここを飛ばして施術から入ると、腕の良し悪しに関係なく、当たるかどうかは運になります。効かなかった院を責める気になれない理由がここにあります。

守備範囲を整理すると、どこに何を頼めばいいかが見えます

役割を一枚に並べます。どこが優れているかではなく、それぞれ得意な場面が違うという地図です。

窓口 主な役割(守備範囲) 診ている場面 向いている場面
整形外科 画像診断で骨折・椎間板ヘルニアの神経圧迫・すべり症などを除外・診断。投薬・注射・手術 静止した構造(レントゲン・MRI) まず最初に。危険信号がある時は必ず
接骨院(整骨院)・整体 打撲・捻挫・肉ばなれなど急性のケガへの施術。炎症と筋緊張を下げる ベッドの上の局所 痛めた直後・炎症期・強い張りを落としたい時
マッサージ・もみほぐし 筋肉の緊張をゆるめ、自覚症状を一時的に楽にする ベッドの上の筋肉 疲労回復・コンディション調整
メディカルゴルフ(当院) 動作を評価して火元を特定 → 整える → 動きを再学習して鍛える スイング動作中の全身の連動 繰り返す腰痛・振るたびに痛む・「異常なし」の後

この表で一番大事なのは、どこも間違っていないということです。

整形外科がなければ、危険な原因を見逃します。接骨院がなければ、急性期に頼る場所がありません。それぞれの持ち場が、ちゃんとあるのです。

ただ、「動いている最中の全身の連動」を診る枠が、この地図には長らく空いていました。ゴルフの腰痛で行き場を失う人が多いのは、そこに担当者がいなかったからです。

一般的な整体との違いは、ゴルフ整体とは?普通の整体との違いでも詳しく書いています。

通う順番を間違えなければ、もう迷子になりません

順番はシンプルです。この4段階だけ覚えてください。

  1. まず整形外科へ。 しびれ、脚に力が入らない、排尿排便の異常、発熱、安静にしていても激しく痛む——これらがあれば最優先で受診します。危険な原因を除外するのは画像診断ができる医療機関の仕事です。
  2. 痛めた直後の急性期は、接骨院・整体で炎症と緊張を下げる。 ここは接骨院の本領です。まず火を消します。
  3. 痛みが落ち着いたら、動作を評価する。 ここが分かれ道です。ゼロで止めるか、火元の配線を直しにいくか。
  4. 火元を整えて、動きを覚え直し、鍛えて定着させる。 整えただけでは戻ります。使うべき筋肉が使える状態を、体に染み込ませるところまでが仕事です。

多くの方が止まってしまうのは、2と3のあいだです。痛みが引いた時点で「治った」と判断してしまう。

けれど、痛みが消えたことと、痛みを生んだ動きが変わったことは、別の話です。ここを分けて考えられるようになると、同じところを何周もしなくて済みます。

私自身が柔道整復師だからこそ、接骨院の役割も限界も書けます

最後に、立場をはっきりさせておきます。

私は鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の国家資格を持っています。柔道整復師は、まさに接骨院の資格です。

つまりこの記事は、外から接骨院を批判しているのではありません。同じ資格を持つ側から、守備範囲を説明しているだけです。

そのうえで、当院が引き受けているのは表の4段目——動作評価から、施術、動きづくりまでを一人が一貫して担当するという枠です。

評価する人、施術する人、トレーニングを指導する人が分かれていると、情報が引き継がれる途中で必ず何かが落ちます。「あの股関節の詰まり」を見つけた人と、それを整える人と、動きに変える人が同じであることに意味があります。

なぜ一人で診るのかは、整体とパーソナルトレーニングを同じ専門家が診る理由にまとめています。


よくある質問(FAQ)

Q. 接骨院での治療は無駄だったということですか?
A. いいえ、無駄ではありません。急性期の炎症と筋緊張を下げるのは接骨院の本領で、そこは確かな効果があります。ただしそれはマイナスをゼロに戻す仕事であり、痛みを生んだ動作パターンまでは変わりません。だからゼロに戻った後、動作に手をつけないと再び同じ場所が痛みます。

Q. 整形外科で「異常なし」と言われました。気のせいなのでしょうか?
A. 気のせいではありません。レントゲンやMRIが写すのは止まった構造です。ゴルフの腰痛の多くは、動いている最中に股関節や胸椎の仕事を腰椎が肩代わりすることで生まれるため、静止画には写りません。「異常なし」は「構造に緊急の問題はない=ここからは動作を診る番」という合図です。

Q. マッサージに通えば予防できますか?
A. コンディション調整としては価値がありますが、予防の主役にはなりにくいです。緩めているのは今ある緊張で、その緊張を生んだ動きは残ったままだからです。緩める(ゼロに戻す)と、動きを変える(プラスに進む)は別作業とお考えください。

Q. どこが悪いのか、自分で見当をつける方法はありますか?
A. 目安として、しゃがみ込む・その場で上半身だけねじるの2つを試してみてください。かかとを浮かさずしゃがめない、あるいは骨盤を止めて上半身だけを回すと極端に回りにくい場合、股関節や胸椎がサボって腰が肩代わりしている可能性があります。ただし自己判断には限界があり、実際のスイングでどう出るかは動作を見ないと分かりません。

Q. 痛みが強い今の時期でも、動作を診てもらえますか?
A. しびれや脚の脱力など神経症状がある場合は、まず医療機関の受診をお願いしています。それ以外で炎症が強い時期は、まず炎症と緊張を落とすことを優先し、動きの評価と再学習は段階的に進めます。順番を守ることが結果的に一番の近道です。

Q. どのくらい通えば変わりますか?
A. 関節の動きやすさは初回から変化を感じる方が多いですが、動作として体に定着するまでには時間がかかります。ラウンド頻度や体の状態によって個人差があります。だからこそ施術だけで終わらせず、セルフケアと段階的なトレーニングまで一貫して行います。


おわりに

同じ痛みで、いくつもの院を回ってきた方ほど、「自分の体は特別に悪いのではないか」と感じています。

そうではありません。探す場所が、痛みの生まれる場所とずれていただけです。

ベッドの上で見つからなかったものは、立って、ねじって、振ってもらえば見えてきます。股関節がサボっているのか、胸椎が止まっているのか。火元に名前がつけば、やることは決まります

一周してきたなら、次は順番を変えてみてください。緩めるところから始めるのではなく、どこがサボっているかを知るところから始める。それだけで、景色が変わります。

ゴルフの腰痛・スイングのお悩みは、東大阪 Mitz BestPerformance へ

国家資格者(鍼灸・あん摩マッサージ指圧・柔道整復)が、機能解剖にもとづいて「診る→整える→鍛える」を一貫して行います。
東大阪・八尾・今里・鶴橋/寝屋川・尼崎/堺・泉北/奈良・神戸方面ほか、広く来院いただいています。

  • Mitz BestPerformance(東大阪市長堂1-2-20 陣内ビル2F・近鉄布施駅から徒歩)
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療の代わりになるものではありません。症状には個人差があります。しびれ・脚の脱力など神経症状がある場合は、まず医療機関を受診してください。


参考文献

  1. Mun F, et al. The relationship between lumbar and hip rotation. 2015. PMC4430877. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4430877/
  2. Lindsay DM, Vandervoort AA. Golf-Related Low Back Pain. 2014. PMC4335481. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4335481/
  3. Edwards N, et al. Trunk Kinematics and Low Back Loading During the Golf Swing. 2020. PMC9219256. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9219256/
  4. Williamson E, et al. Prevalence of Golf-Related Musculoskeletal Injuries. 2024. PubMed 38508702. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38508702/

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