ゴルフの手打ちが直らない本当の理由──「手で打つな」が効かないのは、手打ちが代償運動だからです

30秒で結論

  • 手打ちは原因ではありません。結果です。 体幹と下半身が先に動けない体で、腕が仕事を肩代わりしている状態を、外から見て「手打ち」と呼んでいるだけです。
  • だから「手で打つな」と意識しても直りません。腕を止めた瞬間、クラブを動かす担当がいなくなり、振り遅れるだけです。球が悪くなるのは失敗ではなく、当然の帰結です。
  • 腕が先に動く理由は3つ。①切り返しで腹圧が抜ける ②胸椎が回らない ③右股関節に乗れない・左股関節で受け止められない。この3つのどれかが欠けると、下半身から順に動く順番そのものが成立しません。
  • 神経の指令は近位(体の中心)から遠位(末端)へ流れます。中心が先に働けないとき、脳は「間に合う方法」として腕を選びます。意識で上書きできないのは、これが動き出す前に決まっているからです。
  • ダウンスイングは0.2〜0.3秒ほどで終わります。この時間の中で「手を使わない」と考えて軌道を変えることは、神経の伝達速度から見て起こりません。
  • 直す順番は、腹圧(力の通り道)→ 胸椎(回る場所)→ 左股関節(止まる力)。第4章で、ペットボトル・100均ボール・クラブ1本でできるドリルを3つ挙げます。

この記事が答える質問

  • ゴルフの手打ちを直す方法はありますか?
  • 「手で打つな」と言われ続けているのに、なぜ手打ちが治らないのですか?
  • 手打ちの原因は、腕にあるのですか?
  • 手打ちにならない方法は、意識でどうにかなるものですか?
  • 腕の力を抜くと、逆に球が悪くなるのはなぜですか?
  • 自分の手打ちが、体のどこから来ているのかを調べる方法は?
  • 家でできる手打ち改善のドリルは何ですか?
  • レッスンは受け続けたほうがいいのですか?

はじめに ─ 「言われていることは分かる。分かるのに、そう動けない」

「もっと下半身から」「手で打つな」「腕はついてくるだけ」。

言われている意味は分かる。頭では完全に理解している。それなのに、振ってみると同じ動きが出る。

試しに腕の力を抜いてみたら、今度はクラブが振れなくなって、ダフった。

何年か続けて、こう思う。自分にはセンスがないのだろうか。

先にお伝えします。センスの話ではありません。理解力の話でもありません。

「手で打つな」という指示は、手を使わずにクラブを動かせる体を持っている人にだけ、実行可能な指示です。 その体になっていない人にとって、この言葉は物理的に実行できない命令になります。そして厄介なことに、体は「できません」とは言いません。別の場所を使って、なんとかボールに当てにいきます。

その「なんとか当てにいった結果」が、手打ちです。

この記事では、手打ちを腕の動きとしてではなく、体の中で何が起きた結果としてそうなったのかという順番で解きます。関節と筋と神経のレベルまで降ります。そのうえで、家でできることを3つ挙げます。


第1章【正体】手打ちは原因ではありません。代償運動です

体は、仕事を放棄しません

クラブを振ってボールに当てる。この仕事は、必ず誰かが担当しなければ完了しません。

本来の担当は下半身と体幹です。地面を捉えた足から力が立ち上がり、股関節が回転を作り、腹圧で満たされた体幹がそれを受け渡し、最後に腕とクラブが振られる。この順番で仕事が流れます。

ところが、本来の担当が動けない体だと、仕事は消えるのではなく別の場所に回されます。そして、回された先で最も器用で、最も速く、最も確実にボールに当てられる部品が、腕です。

これを臨床では代償運動と呼びます。苦手な動きを、別の部位が肩代わりして辻褄を合わせる現象です。手打ちは、代償運動の一種です。

つまり、手打ちは体の失敗ではなく、体が出した最適解です。与えられた条件の中で、いちばん確実にボールに当たる方法を脳が選んだ結果、腕が第一走者になっている。腕は加害者ではなく、押しつけられた側です。

だから「手で打つな」は効きません

ここまで来ると、なぜ意識が効かないかが見えます。

「手で打つな」は、腕から仕事を取り上げる指示です。ところが、取り上げたあとに誰がその仕事をするのか、という部分が空白のままです。下半身と体幹がその仕事をできる状態になっていないから、腕が引き受けていたわけですから、腕を止めれば担当者が消えます。

担当者が消えたスイングで起きることは決まっています。クラブが遅れる、フェースが開いたまま入る、体だけ回って手が残る、ダフる、シャンクする。「手打ちを直そうとした日は、球が一番ひどい」 という経験は、ほぼ全員が持っています。あれは、あなたが下手になったのではありません。

そして、球が悪くなるので元に戻す。また指摘される。また意識する。この往復が何年も続きます。

直すべき場所

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。

手打ちを直そうとして腕を止める練習をするほど、体は別の場所で代償を作ります。直すべきは腕の動きではなく、腕より先に動ける体を用意することです。

腕を止めても、体は仕事を放棄しません。腕が使えないなら、首で吊る、肋骨を反らせる、膝を送る、腰椎で回す。どれかを必ずやります。だから、腕を封じる練習は「手打ちの解決」ではなく「代償の移動」にしかなりません。移動した先が、後で痛くなる場所です。

順番はひとつです。先に、体幹と下半身が仕事をできる状態を作る。そうすると腕は、仕事を手放します。 手放させるのではなく、手放せる状況を用意する。ここが違いです。

なお、これはレッスンを否定する話ではありません。レッスンは動きを教える仕事です。当院がやっているのは、その動きが出せる体を作る仕事です。役割が違います。 詳しくは第5章で整理します。


第2章【機序】なぜ、腕のほうが先に動いてしまうのか

腕が先に動く体には、共通した理由があります。ここでは関節と筋と神経のレベルまで降ります。

① 切り返しで腹圧が抜ける ── 力の通り道が消える

腹圧とは、お腹を固めることではありません。 上を横隔膜(呼吸の主役の膜)、下を骨盤底(骨盤の底の筋肉群)、周りを腹横筋(お腹をぐるりと巻くいちばん深い層)が囲んだ「筒」の中に、圧をかけている状態のことです。この圧が保たれると、背骨は内側から支えられ、体幹は力を通せる硬さを持ちます。

スイングで体幹に最大の負荷がかかるのは、切り返しです。下半身はもう切り返しを始めているのに、上半身はまだトップへ向かっている。この一瞬、体幹は上下から逆向きにねじられます。

ここで腹圧が抜けるとどうなるか。

体幹が、水を通せないほど柔らかいホースになります。足元でどれだけ力を作っても、途中で漏れて先端まで届きません。届かないので、先端(腕)が自分で水を出しにいきます。これが、切り返しで腕が仕事を取りにいく瞬間です。

腹圧が抜ける人には、はっきりした形があります。肋骨の前側が上がって開いたまま(いわゆる肋骨が開いた状態)になると、横隔膜と骨盤底が上下で向かい合わなくなります。フタと底がずれた筒には、圧はたまりません。この状態でいくら「お腹に力を入れろ」と言われても、入るのは腹直筋の表層だけで、圧にはなりません。

アドレスの段階で腹圧を作る具体的な手順は、コリン・モリカワも実践する「腹圧アドレス」で扱っています。この記事では、腹圧が抜けると手打ちになる、という因果の部分だけを扱います。

② 胸椎が回らない ── 肩甲骨から先だけで振ることになる

上半身の回旋を担当しているのは、背骨の胸の部分(胸椎)です。腰の部分(腰椎)は、構造上ほとんど回りません。腰椎の椎間関節は面が縦向きに並んでいて、回旋には向いていないためです。

だから「上半身を回す」という動作は、実質的に胸椎の仕事です。

胸椎が固まっている人がバックスイングをすると、回旋の仕事は肩関節と肩甲骨に集まります。胸郭そのものは回っていないのに、腕だけが高く上がるので、外から見るとトップの形はできています。形はできているのに、中身は腕を上げただけという状態です。

ここに問題があります。胸郭が回っていないということは、ダウンスイングで戻すためのエネルギーが、どこにも蓄えられていないということです。捻れていないバネは、戻りません。戻る力が無いので、下ろす仕事も腕が引き受けます。トップで腕、ダウンで腕。手打ちが完成します。

さらに、①と②はつながっています。肋骨が上がって開いた状態は、胸椎を反った位置(伸展位)で固定します。反った背骨は回りません。 呼吸で肋骨を下げられない人は、そのまま胸椎の回旋も失っています。腹圧と胸椎回旋は、同じ胸郭の話です。

トップで腰が反ってしまう現象そのものについては、トップで腰が反る人の胸椎と肩甲骨で詳しく扱っています。

③ 股関節に乗れない・受け止められない ── 順番が始まらない、止まらない

下半身から順に動く、という順番には、始まり終わりの両方が要ります。

始まり=右股関節に乗る。 バックスイングでは、右の股関節が屈曲しながら内側へ回り(内旋)、右のお尻に体重が預けられます。ここに乗れると、骨盤は右へ流れずにその場で回れます。乗れないと、骨盤が右へ横滑りするか、右膝が前へ出て逃げます。どちらの場合も、回転の出発点が作られません。

出発点が無いスイングは、下半身が力を作っていないスイングです。作っていない力は、渡せません。渡すものが無いので、腕が自前で作ります。

右股関節に体重をはめる具体的な手順はバックスイングで右腰が流れる人へ、右膝が前に出る現象は「右膝を出すな」は逆効果でそれぞれ扱っています。

終わり=左股関節で受け止める。 ここが、手打ちの話でいちばん語られない部分です。

ダウンスイングで、左の股関節が屈曲しながら内側へ回り、体重を受け止めます。このとき起きているのは加速ではなく、減速です。骨盤の回転が左股関節でブレーキをかけられて急に遅くなり、その行き場を失った運動量が、体幹へ、腕へ、クラブへと順に移っていきます。ムチの先が走るのと同じ原理で、根元が止まるから先が走ります

左股関節で受け止められないと、骨盤は回り続けます。減速が起きません。減速が起きなければ、末端に速度は渡りません。すると、ヘッドを走らせる仕事も腕が引き受けることになります。

つまり、手打ちの正体のひとつは「止まる力が足りないこと」です。飛ばない人ほど「もっと速く振ろう」としますが、足りていないのはブレーキのほうであることが少なくありません。

④ 神経の順番 ── なぜ意識で上書きできないのか

ここまでの3つを、神経の側から見ると、ひとつの話にまとまります。

人の動きは、近位(体の中心)から遠位(末端)へという順番で組み立てられています。そして重要なのは、この順番が動き出してから決まるのではなく、動き出す前に決まっていることです。

腕を素早く上げる動作を調べた研究があります。オーストラリアのHodgesとRichardsonが1990年代に報告した実験では、腕を上げる指令が出たとき、腕の筋(三角筋)より先に、体幹の深い層にある腹横筋が活動していました。方向を変えても、先に働くのは体幹側でした。そして、腰痛を持つ人ではこの先行が遅れることも示されています。

これは、体幹が「意識して先に締めるもの」ではないことを意味します。動作の直前に、脳が自動で先行させている予測的な制御です。専門的にはフィードフォワード制御と呼びます。

ここから、二つの結論が出ます。

ひとつ。「体幹から動かそう」と意識しても、その意識は間に合いません。 先行は動き出す前に済んでいるからです。先行が入らない体で意識だけを足しても、順番は変わりません。

もうひとつ。ダウンスイングは0.2〜0.3秒ほどで終わります。 目で見て、判断して、命令を出して、筋が反応するまでの時間を考えると、この中で軌道を作り替えることはできません。つまり、スイング中の動きの中身は、始まる前に体に用意されていた条件だけで決まります

だから脳は、条件を見て選びます。体幹の先行が入らない、胸椎が回らない、左で受け止められない。この体で最も確実にボールに当たる方法は何か。答えは腕です。脳は間違えていません。持っている道具の中から、最も確実な手を選んでいます。

意識で直らないのは、意志が弱いからではありません。選択が、意識の手が届かない場所で終わっているからです。

裏返せば、条件を変えれば選択が変わります。体幹が先行し、胸椎が回り、左股関節が受け止められる体になったとき、脳にとっての最適解は腕ではなくなります。そのとき腕は、指示されなくても仕事を手放します。これが「条件が揃えば勝手にそうなる」ということの中身です。

この構造をより広く扱ったものとして、ゴルフで「言われた通りに動けない」本当の原因もあわせてお読みください。


第3章【判別】自分の手打ちが、どこから来ているか

3つの機序のうち、どれが自分の主因かで、始める場所が変わります。その場でできるチェックを3つ挙げます。道具は要りません。

チェック1:腹圧は保たれているか(力の通り道)

やり方(前半):仰向けで膝を立て、片手をみぞおち、片手を脇腹に当てます。鼻から静かに息を吸います。

  • 脇腹と背中側が360度に広がる → 通っています
  • みぞおちと胸だけが持ち上がり、脇腹が動かない → 圧になっていません
  • 息を吸ったときに肩がすくむ → 呼吸を首の筋肉で代行しています

やり方(後半・こちらが本番):立ってアドレスの姿勢を取り、片手を脇腹(肋骨の下、腰骨の上)に当てます。そのままゆっくりバックスイングし、トップの位置で脇腹の張りが残っているかを確かめます。

  • トップで脇腹の張りが消える/柔らかくなる → 切り返しで腹圧が抜けるタイプです

チェック2:胸椎は回るか(回る場所)

やり方:椅子に浅く座り、両膝の間に本かクッションを挟んで潰したまま保ちます(骨盤を固定するためです)。胸の前で腕を組み、骨盤を動かさずに上半身だけを左右へ回します。

  • 左右とも45度ほど回る/左右差がない → 胸椎は使えています
  • 45度回らない/片方だけ回らない → 胸椎回旋が不足しています
  • 膝の間の本がずれる、骨盤が一緒に回る → 胸椎ではなく骨盤ごと回しています。これは胸椎が回っていないことと同じ意味です

回らない側は、そのままトップの浅さと、ダウンでの腕の使い方に直結します。

チェック3:左股関節で受け止められるか(止まる力)

やり方:左脚一本で立ち、右脚を軽く浮かせて10秒。骨盤が水平のまま保てるかを見ます。鏡があれば正面から見てください。

  • 10秒、骨盤が水平のまま静止できる → 受け止められています
  • 右の骨盤が下へ落ちる → 左のお尻の横(中殿筋)が仕事をしていません
  • 上体が左へ倒れて釣り合いを取る → 同じく、左で支えきれていない代償です
  • 左膝が内側へ入る/足の内側に体重が落ちる → 股関節ではなく膝で受けています

もうひとつ、椅子に浅く座り、左の踵を床につけたまま左のつま先を外へ倒します(=左股関節の内旋)。右と比べて明らかに倒れないなら、ダウンスイングで左股関節が入っていきません。

判定と、始める場所

引っかかったチェック 起きていること 第4章で最初にやるもの
チェック1 切り返しで力の通り道が消える ドリル1(ペットボトル)
チェック2 回る場所が胸から肩へ移っている ドリル2(100均ボール)
チェック3 減速が作れず、ヘッドが走らない ドリル3(クラブ1本)

複数当てはまった方は、必ず1→2→3の順で進めてください。理由は次章に書きます。


第4章【手順】腕より先に動ける体を作る、3つのドリル

順番には意味があります。腹圧(通り道)→ 胸椎(回る場所)→ 左股関節(止まる力)。通り道が無いまま回そうとすると腰が反り、止まる力を作ろうとすると膝が入ります。土台から積んでください。

ドリル1:ペットボトルの呼吸ドリル(力の通り道を作る)

用意:500mlか2Lのペットボトル1本(中身は入っていても空でも構いません)。

やり方
1. 仰向けで膝を立て、足裏を床につけます。
2. ペットボトルを横にして、おへその少し上に乗せます。
3. 鼻から4秒かけて吸います。このとき、ペットボトルを真上へ押し上げるのではなく、脇腹と腰の下(床との隙間)を広げるつもりで吸います。
4. 口をすぼめて8秒かけて細く吐きます。吐き切ったところで、肋骨の前側が下がって閉じた位置を3秒キープします。
5. これで1回。10回。

何が起きたら成功か
- 吐き切ったときに、腰と床の隙間が自然に減っている(腰を押しつけて減らすのではありません)
- 息を吐き切った位置でも、脇腹が硬く張ったままである。これが圧が保たれている状態です
- 首と肩に力が入っていない。吸うときに肩がすくんだら、それは首の筋肉で呼吸しています

次の段階:同じ呼吸を、椅子に座って、次に立ってアドレスの姿勢で行えるようにします。アドレスで脇腹が張ったまま吐けるようになったら、チェック1の後半をもう一度やってみてください。

ドリル2:100均ボールの胸椎回旋(回る場所を胸に戻す)

用意:100円ショップのやわらかいボール1個(直径15〜20cm程度。無ければクッションや厚めの本でも代用できます)。

やり方
1. 四つ這いになり、お尻を踵の上に下ろします(正座に近い姿勢で手は前に置く)。この姿勢で腰椎の動きが封じられ、胸椎だけが回る条件になります。
2. 両膝の間にボールを挟み、軽く潰し続けます。 内ももが働くと骨盤が固定され、逃げ場が消えます。
3. 右手を後頭部に添えます。左手は床。
4. 息を吐きながら、右肘を天井へ向けて胸を開きます。目線は右肘を追います。
5. 吸いながら戻します。左右10回ずつ、2セット。

何が起きたら成功か
- 伸びるのが腰ではなく、肩甲骨と肩甲骨の間(背中の真ん中)である
- お尻が踵から浮かない。ボールが緩まない。
- 開いた側の胸が、天井のほうを向く
- 息を吐きながら回すと、最後にもう一段深く入る感覚がある

失敗のサイン:腰が反る/お尻が浮く/ボールが落ちる。これらが出たら、胸ではなく腰で回しています。可動域を欲張らず、浮かない範囲まで戻してください。

ドリル3:クラブ1本の左股関節ブレーキ(止まる力を作る)

用意:クラブ1本。

やり方
1. シャフトを首の後ろへ回し、両肩に担ぎます(両手でシャフトの端を軽く持つ)。
2. アドレスの前傾を作ります。膝は軽く曲げる程度。
3. 右足に体重を8割乗せ、右のお尻の外側が張るのを確かめます。ここが出発点です。
4. 腕とクラブは一切動かさないまま、左のお尻へ体重を移していきます。左の股関節を折り込むように、骨盤だけを左へ回します。
5. 左のお尻の奥にブレーキがかかった感覚が出たところで、ぴたりと止めます。 止めることが目的です。回し切ることではありません。
6. 10回、2セット。

何が起きたら成功か
- 骨盤を止めた瞬間に、担いだクラブの右端が前へ出ようとする。これが、下半身の減速が上半身へ渡っている証拠です。この「勝手に出てくる感じ」が、本来ダウンスイングで腕に起きていることです
- 左の踵から左のお尻まで、1本の柱で支えられている感覚がある
- 左膝が内側へ折れない。 足の親指側へ体重が落ちない

失敗のサイン:骨盤が回り続けて止まらない/上体が前へ突っ込む/左膝が内に入る。いずれも、まだ左股関節が受け止めていません。回す量を半分にして、止まる位置を先に覚えてください。

なお、骨盤の回旋そのものの作り方はゴルフで骨盤を回すとはどういうことかで扱っています。

打席での使い方

ここを間違えると、せっかくのドリルが「新しい意識」に変わってしまいます。

打つ前に素振り1回で通り道を作る。打つときは、何も考えない。 これだけです。

第2章で書いたとおり、ダウンスイングの0.2〜0.3秒に意識は間に合いません。ドリルは「打ちながらやること」ではなく、打つ前に体の条件を揃えるための工程です。条件が揃った状態で振れば、出てくる動きが変わります。変わった動きを、あとから確認してください。


第5章【注意】やってはいけない練習と、痛みが出たときの見極め

やってはいけない4つ

① 腕を止める練習をしない

左手一本の素振り、手首を固定するギア、脇にタオルを挟んで腕を殺す練習。いずれも「腕から仕事を取り上げる」方向の練習です。代わりの担当を用意しないまま取り上げると、体は次の代償を探します。首で吊る、肋骨を反らせる、腰椎で回す。手打ちが消えるのではなく、代償が移動するだけです。移動先が、あとで痛くなります。

② 腹筋運動で体幹を鍛えようとしない

上体起こしやクランチを大量に行うと、腹直筋が肋骨を前下方へ引き込んで固めます。肋骨が固まった胸郭は回りません。 呼吸も浅くなり、腹圧の筒も作れません。第2章の①と②を、両方悪化させる方向です。体幹に必要なのは、締める力ではなく圧を保つ力です。

③ 硬いまま振り込まない

代償運動を含んだ動作を何百球も反復すると、代償運動ごと上達します。神経は繰り返した順番を覚えるので、練習量が多い人ほど手打ちが強固になる、ということが実際に起こります。「練習しているのに直らない」の一部は、ここから来ています。

④ グリップを強く握って手を使わないようにしない

前腕を強く緊張させると、その緊張は肩甲帯へ上がり、肩がすくみます。肩甲骨が上へ吊られた状態は、腕を体幹から切り離す姿勢です。手を使わないつもりの握力が、いちばん腕主導のスイングを作ります。

痛みが出ている場合の読み方

痛みは、代償運動が限界に達した場所に出ます。場所からある程度さかのぼれます。

  • 左手首・右肘が痛む → 腕が加速だけでなく減速の仕事まで引き受けています。左股関節のブレーキが効いていない可能性が高い部分です
  • 打った翌日、腰を反らすと痛い → 胸椎の代わりに腰椎が回旋と伸展を引き受けています
  • 首の付け根・肩甲骨の内側が張る → 肩甲帯で腕を吊っています。腹圧が抜けているときによく出ます
  • 右の股関節の前が詰まる → 右股関節に乗り切れず、骨盤が右へ流れた状態で回している可能性があります

次のサインがある場合は、練習やドリルより先に整形外科を受診してください。

  • 安静にしていても痛む、夜間に痛みで目が覚める
  • 手や足のしびれ、力が入らない、握力が落ちた
  • 転倒や強打の直後から痛みが続いている
  • 発熱を伴う痛み

診断は医療機関の役割です。 当院は診断を行いません。ここは役割の線引きとして、はっきりさせておきます。

レッスンとの関係 ── 役割が違います

レッスンをやめる必要は、まったくありません。

レッスンプロの仕事は、動きを教えることです。当院の仕事は、その動きが出せる体を作ることです。 対立するものではなく、順番が違うだけです。

指摘された動きをその場で再現できているなら、体の条件は足りています。技術の積み上げが効く状態なので、レッスンを続けるのが最短です。

一方、同じ指摘を何年も受け続けているなら、それは指導が届いていないのではありません。その動きを出すための部品が、まだ用意できていないと考えたほうが筋が通ります。この場合、先に体の条件を変えたほうが、結果的に早く進みます。

そして、条件が整った人はレッスンで一気に伸びます。同じ言葉が、急に体で分かるようになるからです。私たちの仕事は、レッスンの代わりではありません。


なぜ、当院(メディカルゴルフ)なのか

打つ前に、診る

当院は、スイングを直す前に体を診ます。この工程をスイング人間ドックと呼んでいます。

人間ドックと同じ考え方です。症状に手を出す前に、まず何がどこまで動いていて、どこが動いていないのかを測る。測らずに手を出すと、代償運動をそのまま強化することになるからです。

見る順番は決まっています。

  1. 関節が動くか(可動性) ── 胸椎の回旋、股関節の屈曲と内旋、足関節の背屈、肩甲帯
  2. 支えられるか(安定性) ── 腹圧が保てるか、片脚で骨盤が水平を保てるか
  3. 順番通りに働くか(連動) ── 地面から順に力が伝わるか、どこで途切れるか
  4. その途切れが、あなたのスイングのどこに出ているか ── 動画のフォーム分析と、身体機能評価を突き合わせます

そのうえで、動かない場所を動かし、支えられる状態を作ってから、スイングへ戻します。

飛ばない、曲がる、痛い。この3つは、別々の問題ではありません。 全部、同じ代償運動から出てきます。だから同じ枠組みで扱えます。

誰が診るのか

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師。国家資格3種を持ち、臨床20年。痛みの臨床と、パフォーマンスのトレーニングを、同じ機能解剖の枠組みで扱っています。

これは、レッスンプロの上位互換という意味ではありません。扱っている対象が違うという意味です。レッスンプロは動きを、当院は体を診ます。

手打ちの相談で、初回に行うこと

初回は、体の評価からお受けします。

  • 第3章の3つのチェックを含む、関節と安定性の評価
  • スイング動画と、体の評価の突き合わせ
  • あなたの手打ちが、腹圧・胸椎・左股関節のどこから来ているのかの特定
  • いま受けている指摘のうち、どれが今の体では実行不可能な指示になっているかの説明

「何が動いていなくて、何ができないのか」を、その場でお伝えします。


よくある質問(FAQ)

「手で打つな」と意識すれば、手打ちは直りますか?

直りません。手打ちは腕の問題ではなく、体幹と下半身が先に動けないことの結果だからです。腕を止めると、クラブを動かす担当がいなくなって振り遅れます。意識で変えられるのは動き出す前の準備までで、ダウンスイングの0.2〜0.3秒に意識は間に合いません。

手打ちの原因は、どこにあるのですか?

主に3つです。切り返しで腹圧が抜けること、胸椎が回らないこと、股関節に乗れない・受け止められないこと。この3つのどれかが欠けると、下半身から順に動く順番が成立しないので、脳は間に合う方法として腕を選びます。第3章のチェックで、自分がどれかを見分けられます。

腕の力を抜いたら、逆に球が悪くなりました。おかしいのでしょうか?

正常な反応です。今まで腕が引き受けていた仕事を取り上げたのに、代わりの担当がいないからです。むしろ、あなたのスイングが腕に依存していたことの証明になります。腕を抜くのではなく、腕より先に動ける体を作れば、腕は自然に力を手放します。

手打ちを直すドリルは、何をすればいいですか?

順番が大事です。腹圧(ペットボトルの呼吸ドリル)→ 胸椎(100均ボールの回旋)→ 左股関節(クラブ1本のブレーキ)の順で進めてください。通り道が無いまま回そうとすると腰が反り、止まる力を作ろうとすると膝が入ります。第4章に手順と、成功の判定基準を書いています。

腹筋や下半身を鍛えれば、手打ちは直りますか?

鍛えるだけでは直りません。上体起こしやクランチは、腹直筋で肋骨を前下方へ引き込んで固めるので、胸郭が回らなくなり呼吸も浅くなります。手打ちの原因を逆に強める方向です。脚のトレーニングも、骨盤と肋骨の位置が整っていなければ、鍛えた筋肉が働ける状況になりません。さらに、手打ちで足りていないのは加速する力より減速する力であることが多く、そこはスクワットの重量では埋まりません。左股関節で受け止める工程が要ります。

練習量を増やせば、いつか直りますか?

代償運動を含んだ動作を反復すると、代償運動ごと定着します。神経は繰り返した順番を覚えるので、練習量が多い人ほど手打ちが固まる、ということが起こります。先に条件を変えてから振り込むのが、いちばん早い順路です。

レッスンはやめたほうがいいですか?

やめる必要はありません。並行で構いません。レッスンは動きを教える仕事、当院は動ける体を作る仕事で、役割が違います。むしろ体の条件が整ったタイミングでレッスンを受けると、同じ指摘が急に入るようになります。

何歳からでも直りますか?

年齢は理由になりません。胸椎の回旋も、股関節の内旋も、腹圧の作り直しも、体の使われ方が変われば変わります。50代・60代の方でも、条件が整った時点でスイングの中身が変わっていく場面を、臨床で何度も見てきました。

東大阪まで通えないのですが。

大阪市内はもちろん、奈良・堺・神戸からも来院されています。頻度は初回の評価のあとに相談して決めます。遠方の方には、ご自宅で行う工程を厚めに設計します。


おわりに

「手打ちが直らない」と悩んでいる方の多くは、自分を責めています。理解していないのだろうか、センスがないのだろうか、練習量が足りないのだろうか、と。

そうではありません。手打ちは、あなたの体が出した最適解です。体幹が力を通せず、胸椎が回らず、左股関節で受け止められない。その条件の中で、最も確実にボールに当てる方法を、脳が選んだ結果です。

だから、腕を責めても変わりません。腕を止めれば、代償は別の場所へ移るだけです。

変えるべきは選択肢のほうです。 腹圧が保たれ、胸椎が回り、左股関節が受け止める体になったとき、脳にとって腕はもう最適解ではなくなります。そのとき腕は、指示されなくても仕事を手放します。

意識して手を使わないようにする必要は、最初から無かったのです。

ご相談ください

東大阪Mitz BestPerformance(メディカルゴルフラボ)

  • 所在地:大阪府東大阪市長堂1-2-20 陣内ビル2F(近鉄布施駅すぐ)
  • 電話:06-7161-4593
  • 対応:スイング人間ドック(動画フォーム分析×身体機能評価)、腰痛・椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症、イップス
  • 来院エリア:東大阪・大阪市内のほか、奈良・堺・神戸など府外からも来院されています

初回は体の評価からお受けします。あなたの手打ちが、腹圧・胸椎・左股関節のどこから来ているのかを、その場でお伝えします。

ご予約・ご相談は true-function.com から、またはお電話でどうぞ。

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著者について

鈴木密正(すずき みつまさ)

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師(国家資格3種)。PRI・DNS・機能的動作分析にもとづき、痛みの改善とパフォーマンスを同じ枠組みで扱う。臨床20年。東大阪Mitz BestPerformance 代表。

※当院は診断を行いません。痛みが強い場合や器質的疾患が疑われる場合は、医療機関の受診を優先してください。

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