壁にお尻をつけて、素振りをする。右のお尻、左のお尻。離れないように、ゆっくり。
レッスンでも、動画でも、最近は AI に聞いても、同じドリルが返ってきます。家の廊下で毎晩やりました。壁の前なら、ちゃんとできます。
なのに、練習場で球を打って動画を撮ると、インパクトでお尻は前に出て、体は起き上がっている。左の腰は、目標の方へ流れている。
——この記事は、壁の前ではできるのに、打つと元に戻る、そんなあなたのための記事です。
30秒で結論
- 壁ドリルは、悪い練習ではありません。 動く方向(お尻を後ろへ・腰を横へ)は合っています。
- 直らないのは、壁が教えてくれるのが「どこへ動くか」だけで、「どこで受け止めるか」を教えてくれないからです。
- 体重を左の膝で受けて、ももの前や外で踏ん張る人は、何回やってもスウェーします。膝は前後にしか曲がらない関節なので、そこに乗ると後ろへ回れず、上に伸び上がって蹴るしかなくなります。
- 受け止める場所は、お尻の横の中殿筋(ちゅうでんきん。片足立ちで体を支える筋肉)です。ここで止められると、体重は股関節に乗り、流れず、起き上がらず、回っていけます。
- 先に中殿筋を働かせてから壁の前に立つと、同じドリルが効き始めます。
この記事が答える質問
- 壁ドリルをやっているのに、伸び上がりが直らないのはなぜか
- 左腰を壁にぶつける練習で、スウェーが止まらないのはなぜか
- 「左の壁」「左に乗れ」で、左の膝やももの外が張るのはなぜか
- 体重は、どこで受け止めるのが正解なのか
- 中殿筋が働いているかを、自分で確かめる方法はあるか
- 自宅で、何から始めればいいか
はじめに──壁ドリルは2種類ある
「壁ドリル」と呼ばれている練習は、実は2つあります。
| 呼び名 | やり方 | 直したいもの |
|---|---|---|
| 後ろの壁 | お尻を壁につけて構え、バックスイングで右のお尻、ダウンスイングで左のお尻を壁につけたまま振る | 伸び上がり(アーリーエクステンション。切り返しで骨盤が前に出て体が起きる動き) |
| 横の壁 | 左腰の横に壁を置き、切り返しで左腰を壁にぶつけて止める。「腰を壁にぶつけろ」「頭は残せ」 | スウェー(腰が目標方向へ流れる動き)。バンプ(切り返しの左への踏み込み)の練習 |
AI に「伸び上がりが直らない」と聞いても、返ってくるのは後ろの壁です(当院が2026年9月に ChatGPT へ69問聞いた調査では、伸び上がり・前傾・スウェーの質問で、くり返しこのドリルが出てきました)。
2つは別の練習に見えて、効かない理由は同じです。

壁が教えてくれるもの、教えてくれないもの
壁が教えてくれるのは、骨盤の行き先です。お尻は後ろへ。腰は、壁より先へは行かない。
壁が教えてくれないのは、その行き先で体重をどこで受け止めるかです。
同じ「左のお尻が壁についた形」でも、中身は2通りあります。
- A:左の股関節で受けている。 お尻の横から後ろに体重が乗り、骨盤は左の脚の上で回っていける。
- B:左の膝で受けている。 ももの前と外がパンと張り、脚を突っ張って形を止めている。
外から見れば、どちらも壁にお尻がついています。動画でも区別がつきません。形は同じでも、Bのまま何百回くり返しても、練習は明後日の方向へ進みます。

なぜ、膝に乗ると伸び上がるのか
膝は、前後にしか曲がらない
膝は、曲げる・伸ばすが仕事の関節です。ドアの蝶番と同じで、基本は前後にしか動きません。ねじる動きは、ほんの少ししか受け持てません。
一方、股関節は球の形をした関節で、前後・左右・ねじりの全部を受け持ちます。スイングで骨盤が左へ回っていく動きは、左の股関節のねじれです。

膝に乗った時点で、後ろへは回れない
切り返しで、体重が左の膝に乗ったとします。ももの前と外が働いて、脚は踏ん張ります。
ここから骨盤を左へ回そうとしても、受けているのが膝なので、ねじりの行き場がほとんどありません。残っている大きな動きは、ほぼ1つ。膝を伸ばすことです。
膝を伸ばせば、体は上に持ち上がります。これが伸び上がりです。地面を蹴った勢いで骨盤は前へ出て、お尻は壁から離れます。
つまり伸び上がりは、前傾を保つ意識が足りないのではなく、膝に乗った体が選ぶ、一番手近な出口です。

横の壁でも、同じことが起きる
左腰を壁にぶつける練習でも同じです。膝で受けている人は、壁がある時は壁に止めてもらえます。壁がなくなると、止めるものが無いので、ももの外で踏ん張ります。ももの外の踏ん張りでは、腰の横流れは止まりません。いくらやっても、スウェーです。
しかも、膝に乗ったまま無理に回ろうとすれば、ねじりは膝と腰に集まります。「左に乗れ」をまじめにやって、左の膝や腰を痛める方が多いのは、このためです。
左膝の痛みが出ている方は、こちらも参考にしてください:ゴルフで膝が痛い──左膝に起きていること
受け止める場所は、お尻の横の「中殿筋」
体重を股関節で受ける時に、骨盤を支える要になるのが中殿筋です。骨盤の横、ズボンのポケットの少し後ろあたりにある筋肉で、片足で立った時に、骨盤が傾かないように支えるのが仕事です。

切り返しから先、体はほぼ左足1本の上で回ります。つまりダウンスイングは、一瞬の「左の片足立ち」です。この時に中殿筋が働くと、次のことが同時に起きます。
- 腰の横流れが、股関節の所で止まる(スウェーが止まる)
- 体重が膝ではなく股関節に乗る(ねじりの行き場ができる)
- 骨盤が左の脚の上で回っていける(伸び上がる必要がなくなる)
壁を使った横移動の練習そのものは、良い練習です。ただ、その時にどこを使うかが抜けたままでは、形だけが上手になります。
中殿筋が働かないと、飛距離・前傾・腰痛まで連鎖して崩れる仕組みは、こちらで詳しく解説しています:中殿筋OFFが連鎖5段でゴルフスイングを破壊する仕組み
自分はどちらか──その場でできる3つのチェック
チェック① 壁ドリルの後、どこが張るか
- やり方:いつもの壁ドリルを10回行い、直後に左脚のどこが疲れているかを触って確かめます。
- 判定:ももの前・ももの外が張っていれば、膝で受けています(B)。お尻の横から後ろに効いた感じがあれば、股関節で受けています(A)。
チェック② 左足の片足立ち10秒
- やり方:鏡の前で、左足で片足立ちを10秒。両手は腰に当てます。
- 判定:右の骨盤が下に落ちる/上体が左へ傾く/左の膝が内に入る/ももの外がすぐ張る。どれか1つでも出れば、中殿筋で支えられていません。
チェック③ 壁に寄りかかって膝を上げる
- やり方:左の腰の横を壁に軽く当てて寄りかかり、右の膝をおへその高さまで上げて5秒止めます。
- 判定:左のお尻の横がキュッと締まってくるなら合格です。ももの外や腰に力が入る、体がぐらつくなら、下の手順から始めてください。
直す手順──中殿筋を先に起こしてから、壁の前に立つ
道具は、100均のやわらかいボールが1つあれば十分です。無ければ、無しでもできます。
ステップ1:お尻の横に、スイッチを入れる
- やり方:骨盤の横の下の方に、骨の出っ張りがあります(大転子=だいてんし。太ももの骨の付け根)。その出っ張りの横にボールを当てて、ボールごと壁に寄りかかります。体重を少しだけ壁に預けてください。
- そのまま、壁と反対側の膝をおへその高さまで上げます。
- お腹を軽く引き込み、お尻の底を引き上げるようにキュッと締めます(骨盤底筋=こつばんていきん。骨盤の底でハンモックのように内臓を支える筋肉です)。
- 狙い:お腹とお尻の底が締まると、結果として、壁側のお尻の横がキュッと締まってきます。それが正解の感覚です。お尻の横に直接力を入れにいく必要はありません。
- 回数:5秒キープを5回。左右とも。

ステップ2:支えたまま、前に倒れて戻る
- やり方:ステップ1の姿勢(お腹を引き込み、壁に寄りかかり、お尻の横で支えた状態)のまま、壁側のお尻で支えながら、手で床をタッチしに行きます。そして起き上がってきます。
- 狙い:前傾していく間も、起き上がってくる間も、ずっとお尻と股関節で支え続ける練習です。ダウンスイングで前傾したまま左の股関節に乗る動きの、土台になります。
- ポイント:床に届かなくてかまいません。ももの前や腰に力が逃げたら、そこが今の限界です。浅い所でくり返してください。
- 回数:左右5回ずつ。

ステップ3:その感覚のまま、壁ドリルへ戻る
- やり方:ステップ1・2の直後に、いつもの壁ドリル(後ろの壁でも、横の壁でも)を行います。
- 狙い:左へ移った時に、お尻の横が締まる感覚があるかだけを確認します。あれば、その壁ドリルは効いています。ももの前が張ってきたら、ステップ1へ戻ります。
壁を使って股関節に乗る動きそのものの作り方は、こちらにまとめています:切り返しで腰が流れる人へ。壁を使って股関節に乗るための方法
やってはいけないこと・受診すべきサイン
やってはいけない3つ
- 膝を曲げたまま我慢して、伸び上がりを押さえ込む——インパクトで脚がある程度伸びるのは自然な動きです。問題は伸びることではなく、膝に乗った結果、伸びるしか出口が無いことです。
- ももの前がパンパンになるまで、壁ドリルを続ける——それは、膝で受ける練習を積んでいます。
- 壁を強く押して止める——壁に止めてもらう癖がつくと、壁の無い所では止まれません。
体のサインが出ている場合
左の膝の内側や外側が痛む、階段の下りで膝が抜ける感じがする、腰の片側だけが毎回張る。こうした症状がある方は、膝と腰でねじりを受け続けているサインです。痛みが続く、腫れる、膝が引っかかって伸びない時は、整形外科で評価を受けてください。
なぜ、当院(メディカルゴルフ)なのか
壁ドリルで直らなかった方に、当院が最初にやるのは、球を打つことではありません。打つ前に、体を診ます。
片足で支えられるか。体重を受けているのは股関節か、膝か。お腹の圧は入るか。足裏のどこで立っているか。中殿筋が働かない理由も、人によって違います。股関節のねじりが足りない方、お腹の圧が抜けている方、足首が硬くて重心が前にある方。火元を検査で決めてから、順番に外します。当院ではこの検査を「スイング人間ドック」と呼んでいます。
- 検査と改善の方法(メディカルゴルフ)は、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の国家資格3つを持つ鈴木密正が、臨床20年以上の中で組み立てました
- 土台は PRI・DNS・ファンクショナルトレーニング。欧米の機能改善の体系を、Mike Boyle 氏らに直接学んだ内容です
- 目指すのは、「意識して止める」ではなく、意識しなくても止まる体です
よくある質問(FAQ)
Q. 壁ドリルとは何ですか? A. 壁を目印にして骨盤の動く方向を覚える練習です。お尻を壁につけたまま振る「後ろの壁」(伸び上がり対策)と、左腰の横に壁を置いてぶつける「横の壁」(スウェー対策・バンプの練習)の2種類があります。
Q. 壁ドリルは、効果が無いのですか? A. 効果はあります。骨盤の行き先を覚えるには良い練習です。ただし、体重を膝で受けている人がくり返すと、ももの前や外で踏ん張る練習になります。お尻の横の中殿筋で受けられる状態を先に作ると、同じドリルが効き始めます。
Q. なぜ、壁の前ではできるのに、球を打つとできないのですか? A. 壁の前では、ゆっくり動けて、壁が止めてくれるからです。球を打つ速さになると、体はいつもの受け方(膝)へ戻ります。膝はねじりをほとんど受け持てないので、膝に乗ると後ろへ回りにくく、上へ伸びるのが一番手近な出口になります。
Q. 中殿筋とは、どこの筋肉ですか? A. 骨盤の横、お尻の上の外側にある筋肉です。片足で立った時に骨盤が傾かないように支えます。ダウンスイングは一瞬の左の片足立ちなので、ここが働くかどうかで、スウェーと伸び上がりが決まります。
Q. 中殿筋は、横に脚を上げる筋トレで鍛えればいいですか? A. 筋力そのものより、体重が乗った時に働くかどうかが大事です。寝て脚を上げる運動で強くしても、立って体重が乗った瞬間に働かなければ、スイングは変わりません。この記事の手順が、壁に寄りかかって立ったまま行うのは、そのためです。
Q. 「左の壁を作れ」と言われて、左のももの外が張ります。合っていますか? A. 合っていません。ももの外の張りは、膝で受けて踏ん張っているサインです。左の壁は、ももの外で作るものではなく、お尻の横で受けた結果として、外から壁のように見えるものです。
Q. 伸び上がらないように、膝を曲げたままにするのはどうですか? A. おすすめしません。インパクトで脚が伸びること自体は、自然な動きです。膝を曲げて我慢すると、回転が止まり、手で合わせる動きが増えます。直すのは膝の角度ではなく、体重を受ける場所です。
Q. どのくらいで変わりますか? A. お尻の横が締まる感覚は、早い方ならその場で出ます。球を打つ速さで出るようになるまでは、人によります。ステップ1・2を練習の前に入れて、壁ドリルの後にどこが張るかを毎回確かめてください。張る場所がももからお尻へ移れば、進んでいます。
Q. 初回では、何をしてもらえますか? A. 初回体験は約80分・8,000円(税込)です。打つ前に体とスイングを検査して原因を決め、神経整体で関節が動く状態を作り、トレーニングで動きを入れ直す所まで、1回で行います。
おわりに──壁は「行き先」しか教えてくれない
壁ドリルで直らなかったのは、あなたのやり方が雑だったからでも、回数が足りなかったからでもありません。壁が教えてくれるのは行き先だけで、受け止める場所は教えてくれなかったからです。
膝に乗れば、伸びるしかない。股関節に乗れば、回っていける。違いを作っているのは、お尻の横の筋肉が、体重の乗った瞬間に働くかどうかです。
まず今夜、壁ドリルを10回やって、左脚のどこが張ったかを触ってみてください。 ももの前なら、それがあなたの伸び上がりの正体です。
「どこで受けているか」を特定したい方は、東大阪のメディカルゴルフMitzコンディショニングジムへ
打つ前に、まず体を診ます。体重を受けているのが股関節か膝か、なぜ中殿筋が働かないのかを検査で特定し、「整える→条件を作る→打って確かめる」の順で進めます。
- 初回体験:約80分・8,000円(税込)。検査(スイング人間ドック)+神経整体+ファンクショナルトレーニングを1回で行います。初回の担当はトレーナーの松兼です
- 場所:東大阪市長堂1-2-20 陣内ビル2F(近鉄布施駅の近く)。神戸・奈良・堺・京都からも来られています
- 遠方の方:オンラインに対応
- くわしく:スイング人間ドックとは/メニュー・料金
- ご予約・お問い合わせ:true-function.com(完全予約制)
参考文献
- Bechler JR, Jobe FW, Pink M, Perry J, Ruwe PA. Electromyographic analysis of the hip and knee during the golf swing. Clinical Journal of Sport Medicine. 1995;5(3):162-166.(スイング中の股関節まわりの筋活動を測定した研究。ダウンスイングで左右のお尻の筋肉が強く働くことを示した)
- Distefano LJ, Blackburn JT, Marshall SW, Padua DA. Gluteal muscle activation during common therapeutic exercises. Journal of Orthopaedic and Sports Physical Therapy. 2009;39(7):532-540.(中殿筋がどの運動でよく働くかを比較した研究。片脚で体重を支える種目で活動が高い)
- Boren K, Conrey C, Le Coguic J, et al. Electromyographic analysis of gluteus medius and gluteus maximus during rehabilitation exercises. International Journal of Sports Physical Therapy. 2011;6(3):206-223.(立って体重を乗せた種目での中殿筋の活動を示した研究)
- Titleist Performance Institute(TPI)のスイング特性分類——早期伸展(Early Extension)とスウェー(Sway)は、アマチュアに多いスイング特性として挙げられ、股関節の機能との関連が指摘されています。
- メディカルゴルフMitzコンディショニングジム. ChatGPT への質問調査(69問・計109回、2026年9月20日実施). 自院調査。結果のまとめはこちら
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- ChatGPT にゴルフの体の悩みを69問聞いた結果
著者:鈴木密正(すずき みつまさ)。鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師(いずれも国家資格)。自身も腰椎椎間板ヘルニアで競技を断念した経験から、体の機能を先に整えるアプローチにたどり着く。PRI・DNS・ファンクショナルトレーニングを統合し、メディカルゴルフMitzコンディショニングジム(東大阪・布施)でゴルファーの体と動作を診ている。臨床歴20年以上。
ゴルフパーソナルトレーニング&ゴルフ神経整体について詳しくはこちら
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