ゴルフのトップでグリップエンドはどこを向く?「前鋸筋」で変わる捻転の質

ゴルフのトップでグリップエンドはどこを向く?「前鋸筋」で変わる捻転の質

ゴルフのレッスンで「トップではグリップエンドがボールの後ろを指すように」と教わったことはありませんか?グリップエンドがボールの前を向いてしまうと、それは捻転不足であり、振り遅れやスライスの原因になると言われます。

多くのゴルファーが「そんなことは分かっている、でも体が動かないんだ」と悩んでいます。そして、その原因を「肩甲骨が硬いから」「股関節が硬いから」という言葉で片付けてしまいがちです。しかし、実は「硬さ」のせいにするのは、本当の原因から目を逸らしているだけかもしれません。

本物のトップを作るために必要なのは、柔軟性ではなく、筋肉の「正しい連動」です。今回は、メディカルゴルフラボの視点から、深い捻転を生む鍵となる「前鋸筋(ぜんきょきん)」の役割と、理想のトップを作るためのリセット術を解説します。


1. 「肩を回す」という意識が捻転を壊す

「肩をもっと回して」と言われると、多くの方が肩の関節そのものを無理にひねろうとします。しかし、解剖学的に言えば、上半身の回転とは肩が回る動きではありません。「肩甲骨が外側にスライドした結果、脇下から腕が遠くに伸び、その連動で胸椎(胸の背骨)が回っているように見える」のが正解です。

肩甲骨がスムーズに外側へ動かないまま肩を回そうとすると、腕だけを担ぎ上げるような「偽のトップ」になります。これではグリップエンドはボールの前を向いたままになり、深い捻転は生まれません。

ここで登場するのが、脇の下にある「前鋸筋(ぜんきょきん)」という筋肉です。この前鋸筋こそが、肩甲骨を正しくスライドさせ、深いトップを作るための「切り込み隊長」なのです。


2. 前鋸筋と腹斜筋。連動が「本物のトップ」を作る

理想的なトップでは、左の前鋸筋がしっかりと働き、それとセットで右の腹斜筋(お腹の横)が収縮します。この「脇からお腹」への斜めのラインが連動することで、初めて背骨を中心とした本当の捻転が完成します。

前鋸筋が働くと、肩甲骨が肋骨に沿って外側に滑り出します。この動きが出ると、肋骨がパカッと開くのを防ぎ、体幹(腹圧)が締まった状態を維持できます。逆に前鋸筋がサボっていると、肩甲骨は背骨に寄ったまま固まり、腕を上げようとするほど肋骨が開いて反り腰になってしまいます。

つまり、「肩甲骨が硬い」のではなく「前鋸筋が使えていないから、肩甲骨が動ける環境にない」というのが真実なのです。


3. 実践:10秒で肩甲骨を外滑りにする「前鋸筋エクササイズ」

前鋸筋にスイッチを入れ、肩甲骨の可動域を即座に引き出すためのワークをご紹介します。

手順1:クラブを肘の上にセットする

ゴルフクラブを一本用意し、両肘の上(二の腕のあたり)に水平に乗せます。手のひらは上を向けて、クラブを軽く支えるようにしてください。肘の幅は、肩幅程度に保つのが理想です。

手順2:脇下から肘を前に突き出す

胸の前(肩より少し低い位置)で、脇の下から腕を遠くに伸ばすように、肘を前方に突き出します。このとき、肩甲骨が背中の中心から外側へ「ズルッ」と滑り出していく感覚を意識してください。

手順3:お腹を引き込み、背中を丸める

肘を前に出すと同時に、お腹を軽く引き込んで背中を少し丸めるような形を作ります。これが、前鋸筋がしっかりと働き、肋骨が締まった状態です。脇の下あたりの筋肉に緊張感があれば、スイッチが入った証拠です。


4. 前鋸筋が効けば、グリップエンドは勝手に後ろを向く

この「肩甲骨が外に滑り、前鋸筋が効いた状態」を維持したままバックスイングをしてみてください。

驚くほどスムーズに左腕が遠くに伸び、胸が深く回るのを感じるはずです。肩甲骨が動くスペースが確保されているため、無理に力を入れなくても、グリップエンドは自然とボールの後ろを指すようになります。

これが、メディカルゴルフラボが推奨する「機能的なトップ」です。筋肉の連動によって作られたトップは、切り返しでの「タメ」も作りやすく、圧倒的なパワーをボールに伝えることができます。


5. まとめ:硬さのせいにせず、機能を取り戻そう

「肩甲骨が硬いから回らない」と諦める前に、自分の前鋸筋が眠っていないかを確認してみてください。ゴルフスイングは、単なる筋力や柔軟性の勝負ではありません。脳が筋肉をどう使うかという「機能」の問題です。

  • 肩甲骨を外にスライドさせる「前鋸筋」が捻転の主役

  • 脇とお腹の連動が「本物のトップ」を生む

  • 肘を前に出すワークで、肋骨を閉じて回転の軸を作る

この前鋸筋のスイッチが入れば、あなたのゴルフのトップは劇的に変わります。グリップエンドが正しい方向を向き、プレーンが整えば、ショットの安定感は飛躍的に向上します。

「体が動かない」という悩みに対し、解剖学的な正解を持っておくこと。それが、ゴルフをよりシンプルに、そして楽しくするための最短ルートです。メディカルゴルフラボと一緒に、機能的な身体で理想のスイングを手に入れましょう。

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