この投稿をInstagramで見る

 

鈴木 密正|関節機能から根本的にスイングを変えるプロ|メディカル ゴルフラボ(@golf_medical_performance)がシェアした投稿

ゴルフの捻転差は「我慢」で作らない。振り遅れを防ぐ体幹の連動

ゴルフのレッスンで必ずと言っていいほど耳にするのが、「下半身リードで捻転差を作れ」「上半身を残して我慢しろ」というアドバイスです。飛距離アップのために、一生懸命トップで上半身を残し、下半身から切り返そうと努力している方は非常に多いでしょう。しかし、いざ振ってみると、激しいダフりや右へのプッシュアウト、あるいはフェースが開いてスライスが止まらない……。そんな「振り遅れ」のループに陥っていませんか？

実はこれ、あなたの我慢が足りないわけでも、筋力が不足しているわけでもありません。骨格のポジションがずれているせいで、捻転差を作る主役である「腹斜筋（ふくしゃきん）」が働けなくなっていることが本当の原因です。

今回は、メディカルゴルフラボの視点から、なぜ意識しても捻転差ができないのか、そして振り遅れを解消して鋭く捕まった球を打つための「骨格リセット術」を詳しく解説します。

1. 捻転差の正体は、筋肉による「分離」である

ゴルフスイングにおける捻転差とは、単に体をねじることではありません。解剖学的に言えば、骨盤と、肋骨を含む胸郭（きょうかく）が、それぞれ独立して動く「分離」の状態を指します。

この分離を司っているのが、お腹の横に位置する腹斜筋という筋肉です。腹斜筋が正しく働くことで、胸の背骨（胸椎）が回転しつつ、骨盤は骨盤で切り返すという、あのプロのような鋭い時間差が生まれます。

ところが、多くのアマチュアゴルファーは、この腹斜筋が「物理的に働けないポジション」でスイングをしています。筋肉には、もっとも力が発揮しやすい「長さ」がありますが、骨格が崩れるとその長さが失われ、スイッチがオフになってしまうのです。

2. 肋骨がパカッと開くと、腹斜筋は死滅する

腹斜筋が働けなくなる最大の原因は、胃の後ろあたりの背骨（胸椎の下部）が前に突っ込みすぎていることにあります。いわゆる「反り腰」や、アドレスで背筋を伸ばそうとしすぎた状態です。

背骨が前に突っ込むと、連動して肋骨の下部がパカッと前方に開いてしまいます。こうなると、肋骨と骨盤をつないでいる腹斜筋は、ゴムが限界まで伸び切ったような状態になり、収縮する力を失います。

この「腹斜筋がサボっている状態」で無理やり捻転差を作ろうとすると、どうなるでしょうか。背骨の軸で回転することができず、腰を反らせて無理やりひねるしかなくなります。その結果、スイングプレーンは大きく歪み、手打ちやリバースピボットを招きます。これが、日によって当たる場所がバラバラになる「日替わりスイング」の正体です。

3. 「上半身を残す」の意識が振り遅れを加速させる

腹斜筋が使えていない状態で、無理に「下半身リード」や「上半身を我慢」しようとすると、身体の上下がつながっていないため、腕とクラブが完全に取り残されます。これが深刻な振り遅れの原因です。

腹斜筋が効いていれば、下半身の動きが瞬時に上半身へと伝わり、クラブが正しい軌道で戻ってきます。しかし、スイッチが切れていると、下半身だけが先行して上半身が右に取り残され、インパクトでフェースをスクエアに戻すことが不可能になります。

つまり、解決すべきは「意識」ではなく、腹斜筋がいつでも働ける「骨格のポジション」を取り戻すことなのです。

4. 実践：アイアン一本でできる「腹斜筋スイッチ」エクササイズ

それでは、その場で骨格ポジションを正常に戻し、腹斜筋にスイッチを入れるメディカルゴルフラボ特製の改善ワークをご紹介します。

手順1：アイアンを背中にセットする

アイアンを一本用意し、みぞおちの真裏あたりの高さで、背中に横向きに当てます。両肘をアイアンに引っ掛けるようにして保持してください。

手順2：背骨でアイアンを押し返す

ここが最大のポイントです。前に突っ込みがちな胃の後ろの背骨を、丸めるようなイメージでアイアンに向かってグーッと後ろに押し返してください。このとき、前側のお腹（腹筋周り）がキュッと締まり、緊張感が入ってくる感覚があれば、骨格が正しいポジションにセットされた証拠です。

手順3：押し返したまま左右にターン

背骨でアイアンを後ろに押し返した状態を「維持したまま」、胸を左右に小さく入れ替えるように回旋させます。

【注意！】よくある間違い

横にターンした瞬間に、背骨がアイアンから離れて前に抜け落ちてしまう方が非常に多いです。これではまた肋骨が開いてしまい、腹斜筋のスイッチが切れてしまいます。常に「後ろに押し当てたまま」回ることで、体幹が入り、胸の背骨による「本物の捻転差」ができるようになります。

5. まとめ：体幹が連動すれば、ゴルフはもっとシンプルになる

「捻転差を作ろう」と頑張って耐える必要はありません。正しい骨格ポジションに背骨を収め、腹斜筋が働く環境を作ってあげれば、捻転差はスイングの中で勝手に生まれるものです。

このエクササイズを行った後にアドレスに入ると、いつもよりお腹に力が入りやすく、バックスイングから切り返しにかけて上半身と下半身が心地よく引き合う感覚がわかるはずです。

• 振り遅れは、腹斜筋が伸び切っているサイン

• 肋骨を閉じ、背中を後ろに押し返すポジションが正解

• 筋肉が働ける環境を整えれば、軸のブレないスイングが手に入る

ゴルフの悩みは、時として技術の問題ではなく、解剖学的なポジションのズレから生じています。まずはこのアイアンワークで「捕まる身体」を作ってください。そうすれば、振り遅れもスライスも卒業し、プロのような力強いインパクトがあなたのものになります。

メディカルゴルフラボは、あなたの身体のポテンシャルを最大限に引き出し、一生ゴルフを楽しめる身体作りをサポートし続けます。